市民公開講座「おなかの病気を知ろう」③ みなさんからの質問&回答

2016/06/07消化器内科
日本消化器病学会 九州支部
第88回 市民公開講座 「おなかの病気を知ろう 〜あなたの悩み・疑問に答えます〜」
日   時:平成28年4月16日(土) 午後2時〜4時
場   所:沖縄市民会館 中ホール
定   員:なし
参加費:無料

平成28年4月16日(土)、沖縄市民会館中ホールにて開催した市民公開講座『おなかの病気を知ろう』にご参加頂き有難うございました。今回会場にて頂いたみなさまからのご質問、メールやお電話にて頂いたご質問の回答をまとめましたので、アンケートを集計しましたので、以下の通りご報告します。

1. 大腸に関するご質問

【 質 問 1 】
30年間朝食を摂る習慣がなく1年前くらいから朝食を摂るようになったのですが朝食後1時間後ぐらいに必ず軟便がでるのですが、、

【 回    答 】
朝食後すぐに排便とのことですが、食べたものが便としてでるのは最低でも6時間ぐらいはかかるといわれていますので、朝、食べたのもがすぐ出ているわけではありません。もともと大腸にあった便がでていることになります。胃、大腸反射といって、胃のなかに食べ物がはいると、腸が動き出すため、直腸に便がおりてきて、便意を催しているので、一概に病気とはいえず、健康の証拠かもしれません。ただ、生活に支障があるようでしたら、過敏性腸症候群という疾患の可能性もありますので、一度診察を受けていただくのがいいかと思います。

【 質 問 2 】
おならがとにかくよく出るので気になって、人が集まる場所に行けません。参加できないので困っています(祝い事とか、祭り事など)。排便は3日〜4日に1回で、出たときはスッキリで残便感はありません。

【 回    答 】
口から飲み込んだ空気と、腸内で食べ物を分解するときに発生するガスが合わさったものがおならです。ほとんどのガスは腸管に吸収されますが、吸収されなかったものが、おならとなって体外に出て行きます。おならは、腸内細菌のバランスが崩れたときや、早食いをしたり、ガムや飴を多く食べたときに、口から飲み込む空気が増えて出やすくなります。対策としては

   1)よく噛み、ゆっくり食べる。
   2)ヨーグルト、納豆、キムチなど乳酸菌の多い食事をとる。
   3)肉類をへらして、野菜、藻膵、キノコなど、食物繊維をよくとる。
   4)ストレスをさける。

などがあります。気になるようでしたら、病院へ一度受診お願いします。

【 質 問 3 】
直腸がんで手術3年目で検査にきています。半年ごとにCT検査もしていますが心配はあります。検査をして安心したいです。

【 回    答 】
直腸がんは手術の時点でのステージで、手術後の再発率も変わってきます。質問された方のステージがどれほどかはわかりませんが、おおむね5年以内は再発のリスクがあるといわれています。すでに3年は経過されているので、再発率は下がってきてはいると思います。仮に再発しても、早期発見することで、治療を追加して、予後が延長できますので、引き続き、主治医の先生の指示のもと、半年ごとのCTを含めた検査をお受けいただくことが大切だと思います。

【 質 問 4 】
今(4〜5年前より)毎晩2種類(スナイリンシロップ、ブルゼニド錠)を飲んでいますが、お薬を飲まなくても便通が良くなる処方はないでしょうか。それに毎年(あるいは2年に1回)大腸にポリープが出るのですが体質でしょうか。食物で抑える事は出来ないでしょうか。

【 回    答 】
便秘に関しては、体質的なものが多いといわれています。薬に頼らなくなるための生活習慣の改善点として、

   1)毎日一回、決まった時間にトイレに行く習慣をつける。便意がなくても、朝に一度はトイレに必ず行き、排便を
    しようと努力する(しかし、本当に出そうもないのに長時間座り続けるのは良くありません)。
   2)積極的に体操や水泳などの運動に心がけ、腹筋を鍛える(一見、腹筋は関係なさそうですが、腹の筋肉の
    強化は排便の上で大切。腹部のマッサージも効果的です)。
   3)朝、起き抜けに冷たい水や牛乳を飲むのも良い。食物繊維を積極的にとり、一日3食を心がける。

などがあげられます。また、ポリープの原因ははっきりしたことはわかっていませんが、便秘との関連も指摘されていますので、例えば、肉類を減らす、野菜、乳酸菌、食物繊維などを積極的にとるなど、便秘をしない食事を心がけることが大切と思います。

【 質 問 5 】
身内に大腸ガンになった人がいて、その家族は検便で陰性と結果が出た場合でも、40才を過ぎたら大腸検査(内視鏡)を受けた方が良いのでしょうか。

【 回    答 】
大腸がんの発生は、明確な遺伝性によるもの(家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん)が約5%で、その他、遺伝性がはっきりとしていないが、家族内に大腸がんに罹った人が複数いる発生パターンがあります。一般的に大腸がんの罹患(りかん)率は、50歳頃から増加傾向を示し、年齢とともに高くなりますが遺伝性のがんでは若年からも発症しますので、ご指摘のように検便検査で陰性であっても一度は大腸検査をおすすめします。

【 質 問 6 】
便は4日に一度でも、お腹の痛み、気分が悪くなければ大丈夫ですか?大腸がん手術後1年4ヶ月です。

【 回    答 】
まず、便秘に対する定義ですが、便秘を客観的に定義付けるのは困難なようで、国際的に日本国内にでも明確な定義はありません。今回の市民公開講座の主催である日本消化器病学会では排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指しています。要は主観的な要素が大きく、排便が毎日あっても苦痛や残便感ある場合は便秘であるといえます。一方、排便が3〜4日に1度でも腹部膨満感、排便に際しての苦痛、残便感などの症状がなければ便秘であるとはいえず、薬による治療等は必要ありません。
質問された方は大腸がんの手術を受けられており、術後の経過(吻合部の状態、狭窄がないかどうか)を見るために定期的な大腸内視鏡検査が必要かと思われます。術後の便通の変化等も含め主治医と相談されることをお勧めします。

【 質 問 7 】
2ヶ月前に大腸がん検診をしました(異常なし)。 最近おなかあたりにガスがたまった感じ…おならが多くなったような気がします。くわしく検査を受けた方がいいのでしょうか?

【 回    答 】
早期大腸がんの約50%が便潜血検査で陰性(異常なし)であるという結果があります。便潜血検査では出血している病変しか陽性になりません。つまりある程度大きくなった病変でないと陽性にならないのです。早期癌は出血しないことが多く見逃されやすいことが多いのが現状です。質問に対するアドバイスですが、もしこの1〜2年に詳しい検査(大腸内視鏡検査)を受けたことがないようでしたら、大腸内視鏡検査を受けることを勧めます。
また、40歳以上でこれまで一度も大腸内視鏡検査を受けたことがなければ是非大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2. 膵癌に関するご質問

【 質 問 1 】
父が膵臓に10mmの腫瘍があると診断されました。腫瘍は良性と言われましたが、悪性になる可能性や遺伝の可能性がどれくらいあるのかとても心配です。予防や対策方法あれば教えてください。(40代女性)

【 回    答 】
膵臓にできる腫瘍には様々なものがあります。例えば、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は悪性化のリスクが1.9〜8.3%といわれていますが、漿液性嚢胞腺腫(SCN)はほとんど悪性化しません。また、悪性化のリスクは年齢や性別、基礎疾患によっても異なるため、一概には言えません。まず、正確な知識・情報を得ることが、予防・対策の第一歩ですので、主治医の先生とよく相談しましょう。

【 質 問 2 】
膵癌についてご質問させてください。早期発見が難しい臓器だと聞いています。毎年人間ドックを受診しておりますが、それ以外に定期的に検査をする必要はありますか?また日常的に気をつけるべきことなどあれば教えてください。

【 回    答 】
膵癌(浸潤性膵管癌)は、直径2cm以下の早期の段階では、無症状で、一般的な血液検査や腹部超音波検査では異常がでないことが少なくありません。腫瘍マーカー、造影CT、MRI、超音波内視鏡(EUS)などを組み合わせて診断をしていきますが、これらを毎年受けることは身体的な負担や費用の面からも現実的ではありません。膵癌の危険因子として、糖尿病(新規の糖尿病や、糖尿病の悪化)、膵癌の家族歴、大量飲酒、慢性膵炎、喫煙、肥満、などがあり、これらの因子を持つ方は、かかりつけ医へ検査の相談をすると良いでしょう。

【 質 問 3 】
お電話にて質問。膵炎を患っており、石原健二先生に受診したいと思っています。中頭病院、ちばなクリニックどちらの病院で受付したら良いですか。また紹介状がないと受付はできないのでしょうか?受診方法を教えてください。

【 回    答 】
外来受診については、中頭病院とちばなクリニックで担当する医師や、紹介状の必要の有無が異なります。詳しくは当院のホームページをご確認ください。

3. その他のご質問

【 質 問 1 】
従来64.5Kgの体重を維持してきたが、最近(ここ半年間ほど前)いきなり2kgほど体重が減っているのですが?普段通りの生活をしていて。

【 回    答 】
「体重減少」と聞くと、すぐに「癌」などの悪性の病気を心配されるかもしれません。しかし、糖尿病、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、慢性の感染症、精神疾患など良性の病気であっても体重減少をきたすことは良くあります。いずれにしても、意図しない体重の減少がある場合は医療機関の受診をお勧めします。

【 質 問 2 】
ポリープが出来る原因は何ですか?食生活にありますか?

【 回    答 】
癌の原因になるといわれる「腺腫性ポリープ」に関しては、生活習慣、環境の要因、遺伝の要因などが言われています。生活習慣の中では特に食生活が重要で、脂肪の摂り過ぎや、食物繊維が少ない食習慣は危険因子とされます。

【 質 問 3 】
希望する先生に診てもらうには、どうすれば良いですか? みんな確認したいところだと思います。

【 回    答 】
基本的には、希望の先生の外来日を予約いただくか、かかりつけ医からの紹介などで受診が可能です。しかし、外来の日程や、予約状況によってはご希望に添えないこともあります。詳しくは、当院のホームページまたはお電話での相談をお願いします。

【 質 問 4 】
便秘にならないように乳製品を摂取するようにしていますが、飲むヨーグルトや牛乳を飲むと必ず下してしまいます。余計、腸に悪いことをしてしまっているのでしょうか?

【 回    答 】
健康のために乳酸菌を含む食品を摂ることが勧められていますが、ヨーグルトや牛乳を摂ると下痢をする場合は、乳糖不耐症と言って体質的に乳製品が合わない可能性があると思います。その場合は、無理せず中止するか、同じ乳製品でも色々ありますので、他の製品に代えて試してみることをお勧めします。

【 質 問 5 】
ピロリ菌はどうやって感染するのですか?除菌できれば、また感染する事はないのですか?もしそのまま除菌せずにいたらどうなりますか?

【 回    答 】
ピロリ菌の感染経路については、感染者の唾液を介した感染が考えられています。ピロリ菌の感染獲得時期については、胃酸の分泌や胃粘膜の免疫能の働きが不十分な幼小児期に成立すると考えられています。この幼小児期の感染経路の大きな要因として、離乳食が開始される生後4〜8か月の時期の保護者による ‘離乳食を噛んで与える行為’ が考えられています。なお、成人における感染は急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性感染で終わる可能性が高いと考えられています。

本邦の成人においては、除菌治療成功後の再感染率は年間1%未満と報告されています。除菌成功後の再感染は極めて稀で、再感染が起こる場合でも除菌後1年以上経過したからです。除菌成功が正しく診断できれば、特別な除菌判定のための観察期間の設定は不要です。なお、胃癌の早期発見のためには除菌成功1年後の内視鏡検査が推奨されています (日本消化器病学会HP 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌治療に関するQ&A一覧 より引用 ) 。

除菌せずにいたらどうなるか?ある日本の報告では約2,800名を8年間、追跡した研究からピロリ菌感染者からは36名(2.9%)の胃がん患者が発生したが、ピロリ菌非感染からは1例も発生しなかったとされている。胃がん発症には他の要因、例えば食物では食塩の過剰摂取、新鮮な野菜や果実の不足なども関係しているし、また胃がんには家系も関連している (日本消化器病学会HP 「ピロリ菌と胃がん 」杉山 敏郎 富山大学大学院医学薬学研究部・内科学第三講座 より引用)。

【 質 問 6 】
最近腸内環境を整えることで、心身共に体調が良くなることが言われていますが、沖縄の風土的に最も適した食材は何だと思いますか?

【 回    答 】
腸内環境を整えるためには、食物繊維を摂取することが重要。沖縄でよく利用されている食材では、人参・大根・ゴボウなどの根菜、豆類、モズク・昆布等の海藻類などを偏りなく食べることが重要だと思います。