小児アレルギーコラム “災害時のアレルギー対応について”

2020/04/08小児科
ちばなクリニック アレルギー外来担当の佐藤です。
『食物アレルギー』『アナフィラキシー』に続いて、今回は『災害時のアレルギー対応』についてお話します。
近年、震災や大型台風などによる停電や水害、感染大流行による自宅待機など、さまざまな緊急事態が発生しています。非日常の場面では、アレルギーのお子さんは多くの危機に直面します。そのため、さまざまな場面を想定した事前の準備が必要となります。
今回のコラムでは、災害時のアレルギー緊急対応のほか、事前の準備が必要な物品などについて説明します。

気管支喘息やアトピー性皮膚炎のお子さんの対応

災害時は環境の変化や日常との格差(温度や湿度、埃(ほこり)や疲労、ストレスなど)により、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が増悪することがあります。
普段使用しているお薬に加え、気管支喘息では発作改善薬、アトピー皮膚炎では増悪時に使用する軟膏などを緊急袋等に準備しておくことが大切です。一週間分程度は確保しましょう。お薬手帳も携帯するようにしてください。
アトピー性皮膚炎は、蒸し暑い状況や発汗で増悪しやすくなります。シャワー浴が難しい環境では、濡れたタオルを絞って体を拭い軟膏による皮膚ケアを十分に行いましょう。(水不足の場合は、アルコール成分不使用のウェットティッシュなども代用可能です。)

食物アレルギーのお子さんの対応

東日本大震災の時、食物アレルギーのお子さんの中で、避難所で提供される炊き出しやパンなどの非常食を食べられない事例が発生しました。(小麦や卵、乳アレルギーのお子さんでは、アレルゲンを含むパンや料理を食べるとアレルギー症状が出る恐れがあるためです。)

大型台風や停電・水害などでも、数日間買い物ができなくなる可能性があります。そのため食物アレルギー児のご家庭においては、緊急時の非常食としてアレルギー対応の保存食やレトルト食などを少なくとも3日分程度(可能であれば1週間分)を備蓄しておくことが大切です。

持ち出し用の避難袋などにも数食分は常備しておきましょう。ミルクアレルギーのお子さんでは、使用可能なアレルギー用ミルクの準備も必要です。最近は通販やスーパーの専門コーナーなどでもアレルギー対応食が充実しているので、この機会に利用してみるのもよいと思います。(アレルギー対応のパンやカレー、レトルトのお惣菜、お菓子など種類も豊富で、アレルギーのないご家族が同じ物を食べることも可能です。) 

アレルギー食材混入を防ぐため、プラスチックの食器類もあると良いと思います。水不足で洗いものが難しい場合は、食器をラップでつつんで使用し、その都度ラップの交換を行うと、洗いものが少なくなるため便利です。ポリ袋などでも代用できます。

緊急時の病院受診や緊急時カードについて

災害時は通常と異なる環境のため、アレルギー食物の誤食リスクが高まり、疲労や皮膚症状の増悪なども重なって、症状が通常より増強する可能性もあります。アレルギー対応の緊急時薬(内服薬やエピペン®など)は常に手元に置くようにしましょう。
災害時においては、食物アレルギー症状や喘息発作が出た時に、かかりつけ医の受診が困難となる場合もあります。保険証やお薬手帳にくわえて、病歴のメモやアレルギー検査結果のコピーなどをまとめて準備しておくと、救急病院などの受診や診察時の説明がスムーズになります。

もしもお子さんとはぐれてしまったら・・・

避難所での周知や、お子さんと離れた時などの対応として、アレルギーの緊急時カードを作成し、ネームプレートやネームタグなどに入れてお子さんの身に着けておくのも有効です。アレルギー情報、疾患名、アレルゲン、かかりつけ医、対応、緊急時連絡先(ご家族)などを記載しておくとわかりやすいと思います。
カード記入例

  • ✓食物アレルギーがあります(わかりやすく大きめに。食物名やイラスト入りでもOK)
  • ✓ぐったりしている、意識がない時などはすぐに救急車を要請してください
  • ✓緊急時は××(ご家族連絡先)まで連絡してください・・・など

個人情報や薬情報はカードの裏面やタグ内に折り込んで内側面に記載なども可
過去のアレルギーコラムもご参照ください。

備蓄や避難袋の内容については定期的に見直しを行い、保存食や治療薬の入れ替えをするとともに、アレルギー緊急カードの見直しを行い、災害時のアレルギー対応についてご家族で情報共有することも大切です。
変化の多い日々ですので、アレルギーのお子さんの安全確保のためにも、できる範囲の準備を整えておくと安心です。
緊急時の避難袋に準備すると良いもの
(通常の非常食、水、ライトや電池、充電器等にくわえて)
アレルギー対応食、簡易食器や保存ラップ、ポリ袋、タオル、ウェットティッシュなど
通常のアレルギー治療薬(内服薬や軟膏、吸入薬など1週間分程度)
アレルギー発作時や増悪時の治療薬(緊急時内服薬やエピペン®など)
アレルギー緊急時カード
アレルギーの病歴メモやアレルギー検査結果コピーなど
保険証やお薬手帳の携帯も忘れずに

参照
アレルギー児対応マニュアル(日本小児アレルギー学会)
緊急時(災害時)のおねがいカード(アレルギー支援ネットワーク)
食物アレルギーサインプレート(エーエルサイン)
  • ※このコラムは、2020年時点のアレルギー診療に基づく内容です。
  • ※アレルギーは個人差の大きい疾患です。個々のお子様の症状や対応につきましては主治医とご相談ください。