小児アレルギーコラム “離乳食はどう進めたらいいの?”

2020/07/11小児科
沖縄市ちばなクリニックのアレルギー外来担当 佐藤です。
今回は『離乳食の進め方』についてです。
(食物アレルギーのリスクがある方向けの内容ですが、一般の方も参考になる部分があると思いますのでよろしければご覧下さい。)

離乳食の進め方にお悩みのみなさまへ

お子さんが湿疹・アトピー性皮膚炎がある、またはご家族にアレルギー疾患をお持ちの場合、お子さんの離乳食の進め方を悩んでしまうご家族が多いようです。
大切なことは「離乳食の開始を遅らせず、バランス良く摂取すること」です。
食物アレルギーの発症を避けようとして離乳食の開始自体を遅らせると、必要なたんぱく源やカルシウム・鉄分などの栄養素を十分にとることができず、お子さんに貧血がみられたり、成長発達に支障が生じる恐れがあります。
食物アレルギー発症のリスクがあるお子さんの離乳食の進め方のポイント
・離乳食の開始を遅らせない。(通常のお子さんと同様に生後5-6か月から)
・気になる食材については “体調の良い平日の日中に、少量から始めること”
・湿疹があるお子さんの場合は十分な肌ケアと口唇ケアによる症状軽減が大切
・米(おかゆ)、野菜などから開始し、白身魚や鶏ささみ、豆腐など順次すすめる
・鶏卵は “加熱卵黄を少量から” 開始する
・除去食が必要なお子さんでは、代替え食により必要な栄養を補う
・授乳中のお母さん自身の食事除去は基本的には不要です
これまで「卵やピーナツ、エビなど食物アレルギーのリスクがある食物は、摂取開始を遅らせた方が安全ではないか」と考えられていましたが、近年「離乳食導入は遅らせないほうが、食物アレルギーの発症を抑制できるのでは」という研究発表が出てきました。また湿疹やアトピー性皮膚炎は食物アレルギー発症のリスクになりますので、十分なケアを行いながら離乳食をすすめていくことが重要です。
どの食物も、初回の摂取は「1種類ずつ少量から」が安全です。アレルギー症状が出た場合に迅速に対応できるよう、かかりつけ医や病院の診療時間にあたる平日の日中(できれば午前中~昼頃)の摂取が良いと思います。感冒など体調不良の時は初回摂取や増量を避けてください。
“少量”については、リスクの高い食物では”米1粒程度”や”耳かき1杯程度”からと言われていますが、比較的リスクの低い米や野菜などは、ペースト状にしたものを小さじ1杯前後からでも良いのではと考えます。食べこぼしや、よだれが顔に付着すると湿疹や赤みの原因になりますので、口の周りをこまめに拭いながら(処方されている軟膏があれば塗布しながら)摂取を進める事が大切です。

卵の進め方

外来でよく質問されるのが “卵の進め方” です。
卵(鶏卵)については”加熱卵黄から” が安全です。卵の初回摂取として卵ボーロや加熱度の低い調理卵(卵スープや茶わん蒸しなど)を摂取した後にアレルギー症状を起こし、外来受診されるお子さんが例年多くいらっしゃいます。卵白よりは卵黄、非加熱よりは加熱卵が比較的安全です。
Pediatric Allergy Educator

そのため「加熱卵黄 → 加熱卵白 → 加熱度の低い卵」の順に少しずつ進める事をお勧めします。

外来で提案している具体的な方法としては “沸騰してから20分程度ゆでた卵から卵黄を取り出し、少量から開始する方法” です。ゆで卵は調理後に長時間放置すると卵白の成分が卵黄に移行するため、調理後は速やかに卵黄を取り外すようにしてください。初回摂取後は1-2日ずつ様子をみながら少しずつ増量して加熱卵黄1/2個(~1個)程度まで進めてみましょう。そのままで食べづらい場合はおかゆ等にまぜてペースト状にすると良いかもしれません。
加熱卵黄が安定して摂取できるようになったら加熱卵白をごく少量から開始します。ただし湿疹など皮膚症状が強いお子さんでは思わぬアレルギー症状が誘発される可能性がありますので、離乳食の進め方(量やタイミング)については主治医の先生と事前に相談しながら行うことが大切です。
近年、食物摂取の数時間後(長い場合は翌日以降)に嘔吐症状などがみられる『消化管アレルギー』の病態があることが知られています(かゆみや蕁麻疹がないことから、アレルギーに結び付きづらいので注意が必要です)。当院でも「卵黄・大豆・アサリ等を摂取すると、2時間〜6時間後に嘔吐を繰り返す」という消化管アレルギーのお子さん方が複数名いらっしゃいます。このような症状がある場合は、摂取を中止し、医療機関にご相談下さい。

その他の食物の進め方

乳製品については、粉ミルクを使用しているお子さんでは摂取可能なことが多いです。生乳やヨーグルトを少量から開始すると進めやすいと思います。大豆は豆腐などから、小麦はうどんから少量ずつ開始してみましょう。
ピーナツやエビなどは、ある程度離乳食が進んでから開始するご家庭が多いようです。ピーナツは誤飲(喉につまらせる)リスクがあるので、粉砕するなどして少量から、エビは桜エビなどを粉砕して少量から、ごはんや粥などに混ぜてトライすると比較的スムーズにすすめられると思います。

どの食物においても、途中でアレルギー症状がみられた場合はすぐに摂取を中止しましょう。軟膏や内服薬(抗ヒスタミン薬)などが事前に処方されている場合は速やかに使用し、症状が増強する場合は医療機関を受診するようにしてください。

呼吸がゼイゼイする、吐き続ける、ぐったりするなどのアナフィラキシー症状(アナフィラキシーコラム参照)が生じた際は、救急車を要請してください。

どの食物においても、頻度は異なりますが、アレルギーが誘発される可能性はあります。
(一部の方では、卵黄や米、野菜などで症状が出る場合もあります。)
そのため、お子さんの体調の良い時に余裕をもって行うことが大切です。
自宅での初回摂取や増量摂取が難しい場合は、医療機関で摂取を行い、症状の有無を確認する場合もあります。

離乳食でアレルギー症状がみられた食物については、当面除去が必要となります。乳や卵アレルギーで除去食を行っているお子さんでは、成長に必要な栄養素(たんぱく源やカルシウムなど)が不足する恐れがあります。そのため、代替えとして豆腐や魚・肉・野菜などを積極的に摂取し、栄養を補うことが大切です。
アレルギーをお持ちのお子さんの場合、毎日の離乳食づくりに苦労されるご家庭も多いと聞きます。時間のある時にまとめて調理し小分けにして冷凍したり、除去食対応の市販の離乳食を上手に活用してみるのも良いと思います。

“あまり頑張りすぎず、その時々で利用できるものを活用することも大切です”

ちばなクリニック小児アレルギー外来では

医師、看護師、栄養士が連携し、治療・ケアの他、栄養摂取量の説明や代替え食の提案、その他様々な取り組みを行っています。
・お子様の状況に応じた離乳食の進め方
・湿疹・アトピー性皮膚炎の肌ケア
・栄養摂取量の説明や代替え食の提案
・院内など安全な環境での初回摂取や増量摂取の提案(※アレルギー症状のリスクが高いお子さん対象)
  • アレルギー外来受診のご希望やご相談のある方は当科外来にお問合せください。
  • コラムに関するご意見、ご感想はこちらへお願い致します。【 メール 】ちばなクリニック医局秘書 宛
  • ※診療や病状に関してのご質問はメールではお受けできません。

参照
日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.食物アレルギー診療ガイドライン2016(2018年改定版)
  • ※このコラムは、2020年時点のアレルギー診療に基づく内容です。
  • ※食物アレルギーや湿疹・アトピー性皮膚炎は、個人差の大きい疾患です。個々のお子様の対応につきましては、主治医とよくご相談ください。