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帯状疱疹について

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帯状疱疹について

帯状疱疹について、グラクソ・スミスクライン株式会社より許可を得て「帯状疱疹予防.jp」を転載して紹介しています。成人日本人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスが体内に潜んでいて、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になると言われています。50歳以上の方は、ワクチン接種で予防することができますので、ワクチン接種の検討にご参考ください。

帯状疱疹の症状

ここでは帯状疱疹の症状について紹介します。
帯状疱疹の特徴をはじめ、初期にはどのような症状が現れるのか、発症から治るまでどのような経過をたどるのか、さらに発症する部位について説明します。

帯状疱疹の特徴

帯状疱疹の主な症状は、体の左右どちらかに生じる痛みやかゆみを伴う発疹です。痛みを伴う発疹は、まもなく小さな水ぶくれに変化すると次第に数を増し、一部には膿がたまります。その後かさぶたとなって皮膚症状は治癒し、同時に痛みも治まります。皮膚症状が治癒した後も痛みが残ることがあり、これは帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)と呼ばれる合併症で、帯状疱疹の後に一定の頻度で発症してしまいます。

 ※合併症:もととなる病気が原因となって発症する別の病気

帯状疱疹の経過

【初期の症状】

帯状疱疹の初期の症状は、体の左右どちらかの神経に沿って生じる皮膚の痛みや違和感、かゆみなどです。痛みは神経の炎症によって引き起こされます。多くの場合、皮膚症状の数日前から1週間ほど前に生じますが、皮膚症状と同時、あるいはやや遅れて生じることもあります。痛みは「ピリピリする」「ジンジンする」「ズキズキする」と表現されるほか、「焼けつくような」と表現されることもありますが、程度はさまざまです。皮膚症状が現れる前後には、発熱したりリンパ節が腫れたりすることもあります。

帯状疱疹の初期の症状

【発疹がでてくる】

発疹は、皮膚の痛みや違和感、かゆみなどが起こった場所に現れます。発疹は、最初はわずかな盛り上がりや丘疹とよばれる小さなぶつぶつです。胸や背中、腹部など多くは上半身に現れ、顔面や目の周りにみられることもあります。

【水ぶくれを経て治っていく】

発疹は、その後小さな水ぶくれに変化していきます。水ぶくれは初め、数ミリくらいの小さなものが数個みられるだけですが、次第に数を増していきます。新しいものと古いものが混在し、帯状に分布します。このように水ぶくれ(疱疹とほぼ同じ意味)が帯状に集まって生じることから、「帯状疱疹」とよばれます。水ぶくれは、血液を含んだ黒ずんだ色になることや膿がたまることもあります。水ぶくれや膿は1週間ほどで破れ、その後かさぶたとなり、皮膚症状は3週間前後で治まりますが、色素沈着や傷跡が残る場合もあります。

帯状疱疹の発症する部位

帯状疱疹の症状は通常、体の左右どちらかの神経に沿って帯状に現れます。多くは上半身にみられ、上肢~胸背部が約30%、腹背部が約20%です。顔面、特に目の周りに現れることもあります。

発症する部位別の割合
 頭部~顔面 17.6%
 頸部~上肢 14.5%
 上肢~胸背部 31.2%
 腹背部 19.6%
 腰臀部~下肢 17.1%


※石川博康 他 : 日皮会誌. 113(8), 1229-39, 2003

帯状疱疹の発症部位

【顔に発症した場合】

帯状疱疹がほっぺたやおでこなど、顔に現れた場合、他の部位と同様に、通常は皮膚症状に先行して痛みやかゆみが生じます。目の周りに現れたものは「眼部帯状疱疹」とよばれ、特に注意が必要です。発症初期から結膜炎や角膜炎などが起こることもあります。

【首に発症した場合】

帯状疱疹は、頭部(首)に症状が出ることもあります。肩から首筋の激しい痛み、あるいは腕が上げられないといった運動麻痺の症状が出ることがあります。

首に発症した場合

【腕に発症した場合】

帯状疱疹の症状は上肢(腕)に出ることもあります。帯状疱疹は片側の神経の流れに沿って現れることから、上肢に発症する場合も通常、左右どちらかの肩や腕、手に生じる痛みやかゆみに続いて、発疹と水ぶくれが帯状にみられます。

【背中に発症した場合】

帯状疱疹は、背中に症状が現れることもあります。背中に発症した場合は、自分では皮膚の変化が見難いので注意が必要です。

【汎発性帯状疱疹】

帯状疱疹は、通常は体の左右どちらかに起こりますが、ごくまれに両側に発症する場合があります。たとえば、帯状の皮膚病変のほかに、少し離れて水ぶくれなどの発疹がみられることがあります。これを汎発性帯状疱疹と言います。

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帯状疱疹の原因

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因の病気です。水ぼうそうになると、治った後もウイルスは症状を出さない状態で体内に潜み続けています。そのため、水ぼうそうになったことのある人なら、ウイルスが体内に潜み続けているため、帯状疱疹になる可能性があります。
ここでは、帯状疱疹がどのように発症するのかを詳しく説明します。また、どのような人がなりやすいのか、再発する可能性はあるのか、人にうつることはあるのか、についても紹介します。

帯状疱疹の原因は水ぼうそうと同じウイルス

帯状疱疹の原因は、多くの人が子どもの頃に感染する水ぼうそうと同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは背骨に近い神経に症状を出さない状態で潜んでおり、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下するとウイルスが再び目覚め、帯状疱疹として発症します。

水痘・帯状疱疹ウイルス

【水ぼうそうの発症】

水ぼうそうは、「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因の感染症です。このウイルスに初めて感染したときには、水ぼうそうとして発症します。多くの人は子どもの頃になり、かゆみを伴う発疹(水ぶくれ)と発熱が主な症状で、通常1週間ほどで治まります。しかし、その後もウイルスは背骨に近い神経に生涯にわたって症状を出さない状態で潜み、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると再びウイルスが目覚めはじめます。水ぼうそうと同じウイルスが原因ですが、形を変えて発症するのが帯状疱疹です。

免疫低下の原因

【潜伏期間】

ウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間を、潜伏期間といいます。「水痘・帯状疱疹ウイルス」に初めて感染すると、通常2週間程度で水ぼうそうを発症します。一方で、帯状疱疹は、水ぼうそうが治った後も症状を出さない状態で潜んでいるウイルスが、加齢や疲労、ストレスなどによる免疫力の低下をきっかけに、再び目を覚まし発症します。ウイルス感染から帯状疱疹が発症するまでの期間は一定ではないといわれています

 ※国立感染症研究所. 帯状疱疹ワクチンファクトシート 平成29(2017)年2月10日

【免疫力の低下】

水ぼうそうは、子どもの頃になることの多い感染症です。原因となるウイルスは、水ぼうそうが治った後も生涯にわたって症状を出さない状態で体内に潜んでいます。そして加齢や疲労、ストレスなどをきっかけに免疫力が低下すると、ウイルスが再び目を覚まし帯状疱疹を発症します。

【帯状疱疹の発症】

免疫力が低下すると、背骨に近い神経に症状を出さない状態で潜んでいたウイルスが再び目覚め、帯状疱疹を発症します。このウイルスは、神経を傷つけながら皮膚に向かうため、多くの場合は、皮膚症状が現れる数日前に痛みが生じます。

帯状疱疹の発症

帯状疱疹になりやすい人

帯状疱疹の発症には年齢が大きくかかわり、高齢になると発症しやすくなります。加齢による免疫力の低下が原因と考えられています。宮崎県の疫学研究(1997年から2019年)では、帯状疱疹の発症率は50歳以上で増加しています。この調査では50歳代と60歳代では女性の方が男性より多いという結果でした

 ※外山 望 : MB Derma, 297: 21-29, 2020

【帯状疱疹の年代別発症率について】

図は、宮崎県で2009年から2015年に行われた調査研究による帯状疱疹の性別・年代別発症率です。帯状疱疹の発症率は50歳代から増加しています。

帯状疱疹の年代別発症率

帯状疱疹の男女年齢別の発症総数および平均発症率(2009~2015年)

 ※Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017より一部改変

【免疫力が低下した人】

帯状疱疹は、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると発症します。また、骨髄移植や臓器移植後の患者さん、白血病や悪性リンパ腫のような血液がんの患者さん、あるいは、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんなどで、帯状疱疹になってしまう割合が高くなっています。

【水ぼうそうになったことがない人は?なった人は帯状疱疹を発症する可能性がある】

水ぼうそうになったことのない人は、帯状疱疹になることはありません。水ぼうそうになったことのある人は、治った後も水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に症状を出さない状態で潜み、ウイルスが再び目覚めることで帯状疱疹として発症します。日本人では15歳以上の概ね9割以上は、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗体を持っています。抗体があるということは、そのウイルスが体内にはいったことがあると考えられます。そのため、多くの人が帯状疱疹を発症する可能性があります。

 ※多屋 馨子 他: 病原微生物検出情報(IASR). 39(8), 133-135, 2018(水痘抗体保有状況:2014~2017年度感染症流行予測調査事業より)

帯状疱疹に繰り返しなるのか?

帯状疱疹は、一度発症したら二度とならないわけではなく、約6%の割合で繰り返し発症することがあります

 ※Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017

【帯状疱疹が再発する原因】

帯状疱疹になると、その原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス」への免疫ができます。しかしその後、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると再発することがあります。1年以内に再発するケースはきわめてまれです。膠原病、特にSLEを有する場合に再発しやすいという報告もあります※※

 ※外山 望 : 病原微生物検出情報(IASR). 39(8), 139-141, 2018

 ※※田中 信 他 : 臨床皮膚科. 47(1), 31-33, 1993

【再発した場合の場所】

帯状疱疹が再発した場合、前回と同じ部位への発症はあまり多くありません。同一神経領域に再発するのは3割程度で、反対側の神経領域には2割ほど、その他の神経領域は約5割です

 ※田中 信 他 : 臨床皮膚科. 47(1), 31-33, 1993

【再発した場合の治療方法について】

帯状疱疹の治療方法は、その原因となるウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の投与と、痛みに対する痛み止めの投与が中心となります。帯状疱疹が再発した場合も同様の治療を行います。

再発した場合の治療方法について

【帯状疱疹発症後、免疫はつくのか?】

帯状疱疹を一度発症すると、免疫はつくとされていますが、再び免疫力が低下した場合には再発することがあります。

帯状疱疹は人にうつるのか?

帯状疱疹を発症した人の水ぶくれの中には、その原因となるウイルスが存在しています。水ぼうそうになったことのない人に帯状疱疹としてうつることはありませんが、主に接触することによって、水ぼうそうとしてうつる可能性があります。一方で、すでに水ぼうそうになったことのある人に帯状疱疹としてうつることはありません。

帯状疱疹は人にうつるのか?

【帯状疱疹が人にうつる原因】

帯状疱疹を発症した人の水ぶくれの中には、「水痘・帯状疱疹ウイルス」が存在しているため、水ぼうそうになったことのない人に対しては、主に接触することによって、水ぼうそうとしてうつることがあります(うつされた人は帯状疱疹になりません)。そのため、水ぶくれが、かさぶたとなって完全に乾燥するまでは、うつしてしまうおそれがありますので、水ぼうそうになったことのない子どもなどとの接触は避けましょう。

【帯状疱疹が人にうつるとどうなるか?】

帯状疱疹は、水ぼうそうになったことのない人に対して、主に接触感染によってうつり、この場合、帯状疱疹ではなく、かゆみを伴う発疹(水ぶくれ)と発熱を主な症状とする水ぼうそうとして発症します。免疫力が大きく低下した人を除き、すでに水ぼうそうになったことのある人にうつることはありません。

【帯状疱疹は子どもにうつるのか?】

帯状疱疹は、水ぼうそうになったことのない子どもにうつる可能性があり、うつしてしまうと水ぼうそうを発症します。乳児や、水ぼうそうのウイルスに免疫を持たない母親から生まれた新生児、さらに妊婦は水ぼうそうが重症化するリスクが高く、妊娠中に発症した場合には、先天性水痘症候群の新生児が出生することがありますから、帯状疱疹になった人との接触は避けるべきとされています。

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帯状疱疹の後遺症

ここでは、帯状疱疹の合併症の中でもっとも頻度の高い、帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)という後遺症について、その原因や症状、さらにどのような人がなりやすいのかなどを説明します。また、その他の注意すべき後遺症や合併症についても紹介します。

よくある後遺症:帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)

帯状疱疹の合併症の中でもっとも頻度の高い後遺症に、皮膚症状が治った後も痛みが残る、帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)があります。PHNの痛みは多彩で、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」疼くような痛み、そして、軽い接触だけでも痛む「アロディニア」とよばれる痛みなどが混在しています。睡眠や日常生活に支障をきたすこともあります。

【帯状疱疹後神経痛の原因】

帯状疱疹は、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると、背骨に近い神経に症状を出さない状態で潜んでいたウイルスが再び目覚めることにより発症します。帯状疱疹の痛みは主に皮膚や神経が炎症を起こして生じる痛みですが、帯状疱疹後神経痛(PHN)は皮疹が治った後に起こり、神経自体への障害によって生じる痛みと考えられています。PHNの特徴的な皮膚感覚の異常とされるアロディニアは、本来は痛みの刺激とはならないような軽い接触によって痛みが生じるもので、皮膚に存在する痛みを感じる部分の刺激性が増しているなどの変化が起きていると考えられています。

帯状疱疹後神経痛の原因

【帯状疱疹後神経痛の症状】

帯状疱疹後神経痛(PHN)の症状や程度は人によって異なりますが、「焼けるような」「ズキンズキンとする」「刺すような」「電気が走るような」「鋭く引き裂くような」痛みが多いとされています。皮膚感覚の異常がみられることもあり、ほとんどの場合、痛みのある皮膚の感覚は鈍くなります。睡眠や日常生活に支障をきたす場合もあります。また、軽く触れただけで痛みを感じるアロディニアが起こることもあり、「シャツが擦れて痛い」「痛くて顔が洗えない」などの日常生活への影響が出ることがあります。

帯状疱疹後神経痛の症状

【帯状疱疹後神経痛になりやすい人】

50歳以上の帯状疱疹罹患者は、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行しやすく、加齢とともに移行率は高まることから、高齢者ほどPHNになりやすいと考えられています。また、帯状疱疹を発症したときに皮膚の症状が重かったり、痛みがひどかったり、皮膚症状が現れる前から痛みがみられたりする場合や、免疫機能が低下する疾患を持つ人はPHNになりやすいとされています※※。このような場合、感覚異常の程度は強く、広範囲に及び、アロディニアによる痛みも激しくなる傾向がみられます。

 ※稲田 英一 責任編集:帯状疱疹Up-to-Date. p50-51, 診断と治療社. 2012

 ※※Whitley RJ, et al.: J Infect Dis. 165: 450-455

その他の合併症

帯状疱疹の合併症の中でもっとも頻度の高い帯状疱疹後神経痛(PHN)の他にも、帯状疱疹の発症部位によって特徴的な合併症が生じることがあります。帯状疱疹発症初期に鼻の周囲に皮膚症状がみられた場合には、高頻度で目の症状を伴う合併症が生じます。角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などがみられることがあり、視力低下や失明に至ることもあります。顔面神経麻痺と耳の帯状疱疹を特徴とする「ラムゼイ・ハント症候群」とよばれる合併症が引き起こされると、めまいや耳鳴り、難聴などを生じることがあります。

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帯状疱疹の治療法

ここでは、帯状疱疹に対する治療法について、痛みや発疹が出ている間の治療、そしてその後に現れることがある帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)の治療に分けて紹介します。帯状疱疹を引き起こすウイルスに直接作用する抗ウイルス薬は、症状が出てからなるべく早く治療を始めることが必要です。帯状疱疹では痛みに対する治療も重要になります。速やかに医療機関を受診し、医師と相談の上、治療することが重要です。

帯状疱疹の治療法は症状によってさまざま

帯状疱疹の治療は、原因となっているウイルスを抑える抗ウイルス薬と、痛みに対する痛み止めが中心となります。帯状疱疹の痛みは発疹とともに現れる痛みと、その後、神経が損傷されることにより長く続く痛みに分けられ、それぞれに合った痛み止めが使われます。

帯状疱疹の治療法は症状によってさまざま

 ※日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ編:神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版.p.90-92, 真興交易医書出版部.2016年

【抗ウイルス薬による治療】

帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬が使われます。抗ウイルス薬は、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化して活発に増えている段階でウイルスのDNA(遺伝情報をもっているもの)の合成を妨げることで、ウイルスが増えるのを抑える働きをします。
症状が軽い場合や中程度の場合には、内服薬(飲み薬)の抗ウイルス薬で治療することができます。
症状が重い場合や免疫力が低下している場合には、入院した上で抗ウイルス薬の点滴による治療が必要となることがあります。

抗ウイルス薬による治療

【痛み止め(鎮痛剤)で痛みを止める治療】

帯状疱疹による痛みに対しては、痛み止めでの治療が行われます。帯状疱疹の痛みは発疹が出るよりも先に現れることが多く、このような皮膚の痛みに対しては、鎮痛剤が用いられることもあります。
痛み止めによる治療はあくまでも痛みに対する治療であり、帯状疱疹そのものを抑えるためには抗ウイルス薬による治療が必要となります。
夜も眠れないほどの強い痛みが続く場合には、ペインクリニックなどで神経ブロックと呼ばれる治療が行われることもあります。神経ブロックは神経の近くに局所麻酔薬を注入して、神経の伝達をブロックする方法です。

【塗り薬(外用薬)を使った治療】

帯状疱疹に対して塗り薬が使われることがあります。
抗ウイルス薬の塗り薬(軟膏など)には、皮膚の表面でウイルスが増えるのを抑える効果が期待できます。抗ウイルス薬の塗り薬は、ごく軽症の場合や、すでにウイルスの活性化が抑えられている場合に使われます
また、痛み止めとして患部の炎症や痛みを抑えるための鎮痛剤・局所麻酔薬、皮疹によってできた皮膚の傷に対するお薬、抗菌薬などの塗り薬が使われることがあります。

 ※白濱茂穂、渡辺大輔 編:目からウロコのヘルペス診療ハンドブックその診断・治療で大丈夫?.p.155, 南江堂.2017年

塗り薬(外用薬)を使った治療

【帯状疱疹後神経痛の治療】

帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)は、皮膚の発疹がなくなった後も残る神経性の痛みです。帯状疱疹の発疹とともに現れる皮膚の炎症による痛みとは痛みのメカニズムが異なり、神経に関係する痛みとしての治療が行われます。
皮膚の発疹がなくなった後、強い痛みが残る場合、痛みが長く続いた場合にはPHNが疑われます。PHNの痛みは「刺すような痛み」や「焼けるような痛み」と表現されます。PHNは3ヵ月以上痛みが残る場合に診断されることが多いのですが、皮膚の発疹がなくなった後も痛みが続く場合、PHNと考えて治療が行われる場合もあります
PHNに対してはCa2+チャネルα2δリガンド鎮痛補助薬のうち保険適用のある薬剤が用いられることがあります。鎮痛補助薬が有効でない場合は、オピオイド鎮痛薬という麻薬性のお薬が使われることもあります。うつ病治療薬も、保険適用のある薬剤が用いられることがあります。
PHNに対してはお薬による治療がメインとなりますが、それに加えて神経ブロック注射やレーザー治療が行われることもあります。

 ※白濱茂穂、渡辺大輔 編:目からウロコのヘルペス診療ハンドブックその診断・治療で大丈夫?.p.155, 南江堂.2017年

帯状疱疹後神経痛の治療

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帯状疱疹の予防

ここでは、帯状疱疹に対する予防法について、ワクチンの接種と日常生活上の留意点を紹介します。帯状疱疹を発症してしまった場合、抗ウイルス薬などによる治療を行っても帯状疱疹後神経痛(PHN /ピーエイチエヌ)などの後遺症が残る場合もあります。そのため、帯状疱疹の「予防」を心がけておくことが望ましいでしょう。50歳を過ぎた人はご紹介する方法に加え、帯状疱疹の予防接種ができます。

帯状疱疹はワクチンで予防する

50歳以上の人は、ワクチンを接種することによって帯状疱疹を予防することができます。
実は、日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスが体内に潜伏することによってできる「抗体」を有しています(図)。これは、多くの人が子どもの時に感染する水ぼうそうが、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によるもので、感染したウイルスは、水ぼうそうが治った後も、症状を出さない状態で体内に潜み続けています。このように、子どもの時に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した人は、このウイルスに対する免疫を持っていますが、獲得した免疫は年齢とともに弱まり、帯状疱疹を発症してしまうリスクが高くなる傾向があります※※。また、一度、帯状疱疹になった人でも、体の免疫力が低下すると再びなる可能性があります※※※

年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況の年度比較、2015~2019年※※※※
~2019年度感染症流行予測調査より~1)

年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況の年度比較、2015~2019年 ~2019年度感染症流行予測調査より~

そのため、ワクチンを接種して免疫の強化を図ろうというのが帯状疱疹の予防接種です。帯状疱疹ワクチンには2種類あります。50歳以上は帯状疱疹の発症リスクが高くなる傾向※※※がありますので、ワクチンの接種は帯状疱疹を発症しないための選択肢のひとつになります。ワクチンは帯状疱疹を完全に防ぐものではありません。また、接種ができない人、あるいは、注意を必要とする人もいますので、接種にあたっては医師とご相談ください。

 ※ 国立感染症研究所: 病原微生物検出情報(IASR).「年齢/年齢群別の水痘抗体保有状況、2019年」[2022年3月2日確認]https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/8812-varicella-yosoku-year2019.html
 ※※ 浅田秀夫 : MB Derma. 297, 39-45, 2020
 ※※※ Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017
 ※※※※ 2019年度は2020年7月現在暫定値

帯状疱疹はワクチンで予防する

【日常生活における留意点】

帯状疱疹の発症には、免疫力の低下が関係していることが知られています。加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化しやすくなります。また、健康な高齢者でも、加齢により免疫力が低下していると考えられます。日頃から十分な休息をとりながら免疫力の維持を心がけ、免疫力を低下させる疲労やストレスのない規則正しい生活を送りましょう。

一般に、好き嫌いのある食事、運動不足、睡眠不足などは免疫力を低下させてしまうといわれています。食事ではさまざまな栄養素をバランスよく摂り、暴飲暴食を避けましょう。

運動については、散歩やウォーキングなどの体温が少し上がる程度の強さのものがおすすめです。日光を浴びることも免疫力アップにつながります。激しい運動や長時間のトレーニングは、逆に免疫力を下げてしまいますので気を付けましょう。

睡眠は身体をメンテナンスする重要な働きをしています。規則正しい生活や適度な運動は質のよい睡眠を得るためにも効果的です。

また、音楽を聴く、テレビや映画を観る、瞑想や入浴など、自分なりのストレス解消法を見つけておくとよいでしょう。

日常生活における留意点

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当院の帯状疱疹ワクチンについて

当院の帯状疱疹ワクチンは、以下の「水痘ワクチン(生ワクチン)」と「シングリックス(不活化ワクチン)」があります。2つを見比べてみてご自分にあったワクチンを選んでください。どちらが良いかお悩みの方はお電話でご相談下さい。

水痘ワクチン シングリックス
種類 生ワクチン 不活化ワクチン
注射方法 皮下注射 筋肉注射
注射回数 1回 2回(2ヵ月間隔)
6ヵ月後迄に2回接種を終える事
自費金額
(2022.3月現在)
9,130円 22,110円×2回
発症予防効果 69.8%(50-59歳) 97%(50歳以上)※※
89%(70歳以上)
持続効果 5年間 平均7年間※※
長期免疫原性10年
接種不適当者 免疫不全状態の方
免疫抑制剤で治療中の方
対象者 50歳以上 50歳以上


 ※ 武田薬品工業くすり相談室より  ※※ グラクソ・スミスクラインホームページより

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